芽衣悠哉が黙々と家路をたどっている頃。
コータとたかちゃんは芽衣のことを話しながらブラブラと歩いていた。
冗談を言い合ってふざけ合ってた2人だが、
前方の歩道橋の前に、不良グループがたむろっているのが見えた。
「うわ、うざいのがいるよ」
「めんどくせぇー」
2人ともその場に立ち止まって様子を見ていると、
歩道橋の上から、敦史が降りてくるのが見えた。
しかも、なんの躊躇いもなく不良グループに道を開けるように言っている。
不良グループに絡まれる敦史。
「あれ、うちの学校のやつじゃねぇ?」
コータとたかちゃんは、敦史の存在は知っているようだ。
寸でで難を逃れたものの、不良に絡まれても堂々としていた敦史をコータもたかちゃんもかっこいいと思った。

(芽衣の家) お風呂あがりの芽衣が、ドライヤーを借りるため春菜の部屋を訪ねる。
春菜は勉強中。
今日、クレープ屋で一緒にいた男子生徒は誰かと尋ねると、中学校も同じだったひとつ上の先輩だという。
「実は、告られたんだ」
と、はにかむ春菜。でも、先輩としてしか見たことがないから付き合うことはないという。

翌朝、芽衣は悠哉とふたりで登校していた。
悠哉はやけに昨夜春菜と一緒にいた男子高校生の存在を気にしているようだ。
「家は近いのかな?一緒に帰ったってことは、春菜を家まで送ったのかな?」
など、執拗に訊いてくる。
そんな悠哉の様子から、悠哉の気持ちを察した芽衣は、咄嗟に嘘を吐いてしまう。
「彼氏だって。」
芽衣の言葉に、狼狽する悠哉。
「お姉ちゃん、彼のこと中学の時から好きだったんだって。あの高校に入ったのも、その人がいるからって…」
「そうなんだ…」
寂しそうに歩きだす悠哉。

(授業中) 真っ暗な教室内。
プロジェクターで天体の動きの映像を流しながら、先生が暦の説明をしている。
「私たちの地球は、ほぼ24時間の周期で自転を繰り返しながら、およそ1年かけて太陽の周りを回っています。このことを地球の公転活動と言います…」
先生の説明に耳を貸すこともなく、芽衣は机の下でメールを打っている。
悠哉宛ての謝罪メール。
―悠哉、ごめん…。あたしウソついた。お姉ちゃんに彼氏ができたってうそ―
メールを打ってはみたものの、送信する勇気もなく、メールを消す。
その時、先生の言葉に不意に顔をあげた。
2月29日の閏年のはなし。
不意に顔をあげたのは、芽衣だけではなかった。
退屈そうに机に突っ伏していた敦史も閏年の話に反応し、顔をあげていた。
先生はこう続けた。
「2月29日は、イギリスでは、ディープデイと呼ばれていて、この日、女性からプロポーズされた男性は断ってはいけないという風習があるそうです。」
閏年の素敵な風習を知って、なんだか温かい気持ちになった芽衣。
そこに悠哉からメールが入る。
―放課後、神社に来れる?―

放課後、芽衣は神社で悠哉から、春菜が好きだと告げられる。
「芽衣から彼氏のことを聞いて、初めて、春菜のこと本気で好きなんだって気づいたんだ」
芽衣の想いも知らず、悠哉は諦められないから、春菜に気持ちを伝えると告げる。
「協力してくれないかな?」
と頼まれ、心とは裏腹に、
「うまくいくといいね」
とほほ笑む芽衣。
そんな2人を敦史は見ていた。
悠哉と別れてから、一人、神社の境内で涙を流す芽衣。
そんな芽衣の様子にハッとし、その場を立ち去ろうとした敦史だが、またもや物音を立てて芽衣に気づかれてしまう。
「西野くん、なにやってんの?」
神社の境内で、三脚を担いで佇んでいる敦史は、芽衣からそう訊かれ、
世話になっている神社の鈴を直そうとしていると答える。
敦史が直した鈴を芽衣が振ると、鈴の隙間から桜の花びらが舞い落ちてきた。
その花びらをそっと両手で受け取った芽衣は、寂しそうに敦史に尋ねた。
「神様が願いを叶えてくれる人ってどんな人なのかな?…お願いしても、叶う人と叶わない人いるから…」
すると敦史は、
「きっとさ、神様はきまぐれなんだよ。だから、願い事が叶う人とかなわない人に違いはないんじゃない?」
と答えた。
その言葉に、芽衣は納得して微笑む。
「ありがとう」
芽衣は言い、それから
「ばいばい」
と手を振った。
その光景が、幼い頃の誕生日の日と重なる。
芽衣が敦史にお誕生日おめでとうと言ってチョコレートプレートをくれた日。

(2000年2月29日)
芽衣が敦史にバイバイと手を振って、ケーキ屋の前から立ち去った後、敦史は芽衣から貰ったプレゼントを手に、自転車を引いてその場を立ち去ろうとしていた。
雪が散らつき、風が強まってきた。
すると敦史はブルブルと震えだし、その場に倒れてしまう。
ケーキ屋の店員がそれを見て慌てて駆け寄る。
病院に運ばれる幼き日の敦史。
検査の結果、敦史の体から覚せい剤反応が出る。

第一話おわり

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